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#024 2007_9月号
 ニルソンがこの世を去ってから、13年の時が経過した。急逝の報にぼう然となったあの日が昨日のことのようだ。実は、亡くなる前年、ニュー・アルバムのレコーディングをしているという情報が届いたこともあり、当時、私も企画制作協力していたプロモーターが来日公演の打診をし、水面下での交渉をしていた時期もあった。本国でもワンマン・コンサートなど、行なっていなかったニルソンだが、日本からのオファーに興味を示し、条件等の交渉が始まったのだが、結局、折り合いがつかず、いつの間にかその話はフェイドアウトしてしまった。もう少し辛抱強く交渉をつづけ、彼の健康面にも問題が起こらなければ、日本公演が実現していたかもしれない。今更、たらればの話をしてもしょうがないが、70年代初めに一度だけ、訪れた日本に条件次第では、もう一度、行ってみたいと本人が考えていたということ、ファンの方には知っていてほしい。
 件のプロモーターは、ニルソンとの交渉とほぼ同時期にローラ・ニーロとも招聘交渉を行なっていて、そちらの方は無事、契約に漕ぎ着け、1994年2月には、東名阪のツアーが実現、私はツアー・マネージャーとして同行することになった。ニルソンの訃報から一ヶ月後のことだった。
 生前、レコーディングされたアルバム『Papa's Got A Brown New Robe』(録音当時の仮タイトル)は、残念ながら現在も未発表のままで、正式にリリースされるというニュースはまだ届かない。
"失われた週末"の頃を振り返るようにけだるく歌われる新曲では、「もうオイスター・バーもなくなり、リンゴ・スターもいない」とか、「イエスタディ」、「ペニー・レーン」、「サムシング」なんてタイトルも織込まれており、彼ならではの諧謔とウィットは健在だったのだが。プロデューサーのマーク・ハドソンは、70年代半ばに活躍したハドソン・ブラザーズの元メンバー。元奥さんのゴールディー・ホーンとの間の娘は、あのケイト・ハドソンだ。ブルース・ジョンストンもカヴァーした「ランデヴー」は、ハドソン・ブラザーズのヒット曲だった。このニルソン最後のアルバム、近い将来、日の目を見ることを切に願う。さて、予てより制作が進められていたニルソンの生涯を綴ったドキュメント映画『Who Is Harry Nilsson(And Why Is Everybody Talking About Him?』(ジョン・シェインフェルド監督)だが、いよいよ今年、一般公開されるとの情報もある。リンゴ・スターやジミー・ウェッブ、ブライアン・ウィルソン、ミッキー・ドレンツ、ロビン・ウィリアムズ、テリー・ギリアムほか友人、関係者たちの証言やニルソンの珍しい演奏シーンも観ることができるファン待望の映像作品で、インタヴュー出演したニルソンの友人ヴァン・ダイク・パークスによれば、ニルソンの人生、音楽の光と影を描いた見応えあるドキュメンタリー作品とのこと。日本での劇場公開は、絶望的と思われるので、早い時期のDVD発売を期待したい。
 このほか、1980年にイギリス/日本でリリースされ、なぜか本国アメリカでは未発表のままになっているラスト・ソロ『FLASH HARRY』(MERCURY)。以前、ユニバーサルの「名盤の殿堂」シリーズなどでも度々、リクエストしたが許諾が下りなかった。これもぜひCD化してほしいもの。
 さて、今年、RCAレコードからデビュー40周年となるハリー・ニルソン。8月22日(8枚)と9月26日(7枚)に渡り、ニルソンのアルバム15枚が最新リマスターを施され、紙ジャケットで再発される。殆どのアルバムにボーナス曲が追加され、アメリカ盤オリジナル・リリース時に付いていたポスターなどもミニチュア復刻、封入されている。ライナーは、ニルソンを愛する高浪敬太郎、鴨宮諒、サエキけんぞう、渚十吾、小倉エージ、萩原健太、宇田和弘の各氏のほか私も書かせてもらった。

 では、今回の紙ジャケ・シリーズの中から一部、それと関連作品を紹介しておこう。
O.S.T./ スキドゥーSKIDOO (BMGジャパンBVCM-35115)紙ジャケ限定盤
 社会派監督として知られるオットー・プレミンジャー監督が制作したおバカなコメディ映画のサウンドトラック・アルバム。ジャッキー・グリースン、キャロル・チャニング、グルーチョ・マルクス、フランキー・アヴァロン等に混じって、ニルソンもチョイ役で出演している。音楽は全曲、ニルソンの書き下ろし作品で、ユーモアたっぷりの楽曲。[1968年作品] 日本初CD化。

NILSSON / ハリーの肖像 (BMGジャパンBVCM-35116)紙ジャケ限定盤
 日本では、このアルバムが一番親しまれたのではないだろうか。ビートルズやランディ・ニューマンのカヴァーもいいセンス、ヒット曲「孤独のニューヨーク」のほか「小犬の歌」、「レインメイカー」など、オリジナルも粒揃いだ。 [1969年作品]


NILSSON / 俺たちは天使じゃない (BMGジャパンBVCM-35125)紙ジャケ限定盤
 実質的には、ヴァン・ダイク・パークスがプロデュースした作品と言っていいだろう。『ディスカヴァー・アメリカ』や『ヤンキー・リーパー』の延長のようなトロピカル・ダンディなバーバンク・カリビアン・サウンドが中心。[1975年作品]


NILSSON / 眠りの精 (BMGジャパンBVCM-35126)紙ジャケ限定盤
 これもヴァン・ダイク・パークス色濃いアルバム。レオン・ラッセル、ジェシ・エ
ド・デイヴィス、ジム・ケルトナー、ダニー・クーチ、フレッド・タケットほか、参
加ミュージシャンも豪華。[1976年作品]


NILSSON / ハリーの真相 (BMGジャパンBVCM-35127)紙ジャケ限定盤
 オリジナルは2曲のみ。ほかは、ジョージ・ハリスン、アメリカ、ランディ・ニューマンのカヴァーやドゥーワップ、カリプソの名曲で構成。「セイル・アウェイ」の熱唱が胸を打つ。[1976年作品]


V.A. / FOR THE LOVE OF HARRY: EVERYBODY SINGS NILSSON (MUSICMASTERS)輸入盤廃盤
 1995年にアメリカでリリースされたトリビュート・アルバム。ジミー・ウェッブ、ランディ・ニューマン、ブライアン・ウィルソン、ロン・セクスミス。エイミー・マン、アル・クーパーほか、参加アーティストが凄い。もちろん内容も素晴らしい。廃盤のため、見つけたら迷わず買った方がいい。

POPEYE (PARAMOUNT 01171)輸入盤DVD
 1980年に公開されたポパイの実写版映画。ロバート・アルトマン監督、ロビン・ウィリアムズ、シェリー・デュヴァル主演。音楽をニルソンが担当、劇中、ヴァン・ダイク・パークスもちらりと登場する。



【長門芳郎プロフィール】

70年代初期から後期にかけ、シュガー・ベイブ(山下達郎/大貫妙子ほか)、ティン・パン・アレー(細野晴臣/鈴木茂/林立夫)のマネージャーとして、コンサート/レコード制作に携わる。70年代末〜80年代末には、南青山の輸入レコード店パイド・パイパー・ハウスの店長/オーナーを続けながら、ピチカート・ファイヴのマネージメント、海外アーティストのコンサートをプロデュース。ヴァン・ダイク・パークス、ドクター・ジョン、リチャード・トンプソン、フィービ・スノウ、ダン・ヒックス、ジョン・サイモン、ローラ・ニーロ、ピーター・ゴールウェイ、NRBQほか多数の初来日ツアーを手がける。80年代末にヴィレッジ・グリーン・レーベル(ポニーキャニオン)をスタートさせ、海外アーティストのレコード制作に携わる。98年からは、ドリームズヴィル・レーベルのレーベル・プロデューサーとして、数多くのアルバム制作を行なっている。以上の仕事の傍ら、70年代から現在まで、数多くの洋楽アルバム/CDのリイシュー企画監修、アート・ディレクションを行い、その総数は700タイトル以上。現在音楽番組「ようこそ夢街名曲堂へ!」にレギュラー出演中。




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