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#005 2006_2月号













(1) LOVERS ISLAND
/VARESE SARAVANDE 302 066 692-2
〈輸入盤〉
(2) VANCE 32
/VIVID SOUND
(3月に紙ジャケット再発)
(3) SHORT VACATION/DREAMSVILLE YDCD-0080
(4) LIVE AND OUT OF THIS WORLD/DREAMSVILLE YDCD-0034
(5) LOOKING FOR AN ECHO
/32 RECORDS 32001
〈輸入盤・廃盤〉
*1996年にアメリカでリリースされたCDのジャケットには、長門編集長の撮影したグループ・ショットが使われている。
(6) LOOKING FOR AN ECHO
(DVD)
〈輸入盤〉
(7) LOOKING FOR AN ECHO
(サントラ盤)
SIN-DROME SD-8952
〈輸入盤〉


  結局のところ、 昨年、一番聴いたアルバムは、ケニー・ヴァンス&プラノトーンズの新作『LOVERS ISLAND』(1)だったろうか。ある時期、ベッド脇にあるCDプレイヤーには、ずっと『LOVERS ISLAND』が入れっぱなしだったこともあった。スカイライナーズの「ロンリー・ウェイ」、ジェリー・バトラーの「フォー・ユア・プレシャス ・ラヴ」、ロバート&ジョニーの「ウィ・ビロング・トゥゲザー」、ロージー&オリジナルズの「エンジェル・ベイビー」ほか、オールディーズ・ファンには、よく知られれた名曲を中心にした選曲。随分前に、私がリクエストしたことのある「ホワット・アー・ユー・ドーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ」が収録されていたのもうれしかった。いつもながら、ケニーの温かな歌声とプラノトーンズのハーモニーを聴いていると、胸の奥がキューンとなってしまう。不覚にも涙することもあるくらい、彼の歌声には、疲れた心を癒してくれる優しさがある。
 今から15年ほど前のこと、ニューヨーク滞在中、ケニー・ヴァンスとプラノトーンズのリハーサルを覗きにギタリストのジェリー・フリードマンのアパートメントを訪れたことがあった。リヴィング・ルームでは、既にケニー、マレイ・ウェインストック(元フィフス・アヴェニュー・バンド)、ゲイリ−・ボナー(元マジシャンズ)、エディ・ホーケンソン(元ブルックリン・ドリームズ)らが練習を始めていた。部屋の中には、メンバーと私だけ。「ライフ・イズ・バット・ア・ドリーム」、「アイム・ソー・ハッピー」、「ウイ・ビロング・トゥゲザー」など、次から次に歌われるドゥー・ワップ・ナンバーの数々。床に座り込んだ私は、ケニーたちの美しく、躍動するアカペラ・ハーモニーに包まれ、ただただうっとりするのみ、夢見心地の時間を過ごしたのは言うまでもない。この時、思い出したのは、昔、マンハッタン・トランスファーのティム・ハウザーにインタヴューした際に聴いた話。50年代半ば、彼が15才の時、彼の地元ニュー・ジャージーの劇場に公演に来ていたフランキー・ライモンとティーンエイジャーズの楽屋にひょんなことから紛れ込みんでしまったらしいのだが、そこでティーンエイジャーズが彼の目の前で、当時のヒット曲「アイ・プロミス・トゥ・リメンバー」をアカペラで練習しはじめ、天にも昇るような体験をしたと語ってくれたことがあったのだ。
 60年代に数々の全米ヒット曲を出し、アメリカの人気グループ、ジェイ&ジ・アメリカンズ。当時から、大好きなグループで、「もっと寄りそって」や「カラ・ミア」などのシングルを買っては、すり減るほど聴きまくったもの。そのアメリカンズのオリジナル・メンバー、ケニー・ヴァンスが1975年に発表したソロ・アルバムが『VANCE 32』(2)。ジェイ&ジ・アメリカンズ、ラスカルズ、アンダース&ポンシアの元メンバーらを始め、ロン・カーター、グラデイ・テート、ベティ・カーター、コーネル・デュプリー、スティーヴ・ガッド、リチャード・ティー、トニー・レヴィン、ジョン・トロペイ、ラリー・ハーロウら、ニューヨークのジャズ/フュージョン/サルサ界の大物も多数参加し、「アイム・ソー・ハッピー」(ルイス・ライモン&ティーンコーズ)、「マイ・トゥルー・ストーリー」(ジャイヴ・ファイヴ)など、彼のルーツであるドゥーワップ・クラシックスやサム・クック、スティーリー・ダンのカヴァーを中心にジャズ、サルサ風味のサウンドも聴かせるという内容だった。一度、ワーナーの名盤探険隊シリーズで、CD化されたことがあるが、今年3月には、紙ジャケットになって、再登場するので、前回、買い逃したひとはこの機会にどうぞ。
 『ショート・ヴァケーション』(3)は、1988年にリリースされた2枚目のソロ・アルバム。ピーター・ヒメルマンやジョン・キャファティ&ザ・ビーヴァー・ブラウン・バンドのメンバー。さらにヒュー・マクラッケン、マーカス・ミラー、ケニー・カークランド、デイヴィッド・サンボーン、ジェイムス・ギャドソンらニューヨークのトップ・ミュージシャンらが参加。収録曲は、「ヒー・ウィル・ブレイク・ユア・ハート」(ジェリー・バトラー)、「ワンダフル・ワールド」(『VANCE 32』に続き、2度目の録音となるサム・クック作品)、「サム・カンド・オブ・ワンダフル」(ドリフターズ)、「バイ・バイ・ラヴ」(エヴァリー・ブラザース)などのカヴァーのほか、映画『奇跡の歌』の挿入歌「タッチ・ウィル・テル」や「ショート・ヴァケーション」などのオリジナル。ジャジー&フォーキーな味わいに満ちた傑作アルバムだ。
 1998年、グリニッジ・ヴィレッジのバーで、ケニー・ヴァンス、マレイ・ウェインストックと雑談している時に持ち上がったのが、ヴィレッジの「ビター・エンド」でライヴ・レコーディングのためのショーをやろうというアイデア。ビター・エンドは、 ダニー・ハザウェイ、カーティス・メイフィールド、アイズリー・ブラザーズ、ディオンなどの傑作ライヴ盤がレコーディングされた名門クラブだ。このアイデアが実現し、リリースされたのが、『LIVE AND OUT OF THIS WORLD』(4)である。収録されているのは、『オン・ザ・ストリート・コーナー』の中で、山下達郎も歌っている「グローリア」、フィービ・スノウが飛び入りで歌うサム・クックの「ユー・センド・ミー」ほか、インプレッションズ、スカイライナーズ、キャディラックス、スピナーズ、ファイヴ・サテンズ、フラミンゴズなどのドゥーワップ・クラシックス、ソウル・ナンバーなど、メドレーを含む18曲。ハイライトは、ケニー・ヴァンスの18番「ルッキン・フォー・アン・エコー」。天にも届かんとするケニーの美しいファルセットがコーラスと溶け合った瞬間の感動は、まさに鳥肌ものだ。
 プラノトーンズのCDは、このほか、数種類の編集盤やライヴがあるが、現在ではほとんどが廃盤になっている。中でも1996年にジョエル・ドーンのジャズ・レーベル、32レコードから出た『LOOKING FOR AN ECHO』(5)は、お薦め。「グロリア」、「瞳は君ゆえに」のスタジオ・ヴァージョンが聴けるのは、このアルバムだけ。さらに名曲「ルッキング・フォー・アン・エコー」のオリジナル・ヴァージョンとニュー・ヴァージョンも一緒に収録されている。
 最後になったが、2002年に日本でも公開された映画『奇跡の歌(原題:LOOKING FOR AN ECHO)』を紹介しておこう。この映画は、タイトル通り、ケニー・ヴァンスの名曲「ルッキング・フォー・アン・エコー」にインスパイアされて作られた愛と友情とドゥーワップ・サウンドに溢れた感動作。ケニー・ヴァンスとプラノトーンズが全面的に音楽を担当、全編に彼らの美しい歌声とハーモニーがフィーチャーされている。ブルックリンを舞台にした元ホワイト・ドーワップ・シンガーの物語ということもあって、ケニー・ヴァンス・ファンは見逃せない作品だ。DVD(6)とサントラ盤 (7)が出ているので、これも是非、チェックしていただきたい。


【長門芳郎プロフィール】

70年代初期から後期にかけ、シュガー・ベイブ(山下達郎/大貫妙子ほか)、ティン・パン・アレー(細野晴臣/鈴木茂/林立夫)のマネージャーとして、コンサート/レコード制作に携わる。70年代末〜80年代末には、南青山の輸入レコード店パイド・パイパー・ハウスの店長/オーナーを続けながら、ピチカート・ファイヴのマネージメント、海外アーティストのコンサートをプロデュース。ヴァン・ダイク・パークス、ドクター・ジョン、リチャード・トンプソン、フィービ・スノウ、ダン・ヒックス、ジョン・サイモン、ローラ・ニーロ、ピーター・ゴールウェイ、NRBQほか多数の初来日ツアーを手がける。80年代末にヴィレッジ・グリーン・レーベル(ポニーキャニオン)をスタートさせ、海外アーティストのレコード制作に携わる。98年からは、ドリームズヴィル・レーベルのレーベル・プロデューサーとして、数多くのアルバム制作を行なっている。以上の仕事の傍ら、70年代から現在まで、数多くの洋楽アルバム/CDのリイシュー企画監修、アート・ディレクションを行い、その総数は700タイトル以上。現在音楽番組「ようこそ夢街名曲堂へ!」にレギュラー出演中。





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