|
|
| 長門: |
茂くんのギター・ヒーローといえばまず、ヴェンチャーズだと思うんだけど、歌モノだと誰に夢中だったの? |
| 鈴木: |
あの頃、ビートルズがヴェンチャーズと並行して流行っていたじゃないですか?レコードを聴くっていうことだけであれば、やっぱりビートルズを聴いていましたよね。あとはザ・フーとか。細野さん達と出会う前はイギリスのロックがほとんどで、クリーム、ヤードバーズ、特にプロコル・ハルムが好きだったのかな?そういうのを聴いていて、細野さんの家に遊びに行った時に、ウェスト・コーストのバッファロー・スプリングスフィールドやモビー・グレイプだとかを聴かされて、うわぁ〜!アメリカのロックも面白いって。それまではロックだけだったんだけど、細野さんの処に行くようになってからは、段々カントリー臭くなっていくんだよ(笑)。はっぴいえんどの1枚目(『はっぴいえんど』通称:ゆでめん)は、まだイギリスのイメージを引きずっていたから、自分の気持ちとしてはジミ・ヘンドリックスだったの(笑)。『ゆでめん』を作り終わって直後、大阪とかに呼ばれて旅をしている中で、音楽的にもアメリカの影響が段々強くなっていくんだよね。 |
| 長門: |
それで3枚目の、アメリカのロスで録音した『HAPPY END』の頃にはリトル・フィート、ヴァン・ダイク・パークスに行くわけなんだね。 |
| 鈴木: |
そうだね。ロスのクローバー・スタジオでリトル・フィートが録音していて、ローウェル・ジョージが真ん中に立って、円陣を組んだ一人一人を見回してウネウネ煽りながら、音を作っていくんだよね。それでリズムを録り終わってから、自分のスライドを重ねていく。あの風景が、かなりショックというか頭の中に焼き付いちゃってね。その後、はっぴいえんどは解散したんだけど、ティン・パン・アレーを作るでしょ。だけどティン・パンは自分達で唄うっていうのをあまりしなくて、結局バッキングの仕事がメインになってきてしまってね。ソロ・アルバムを作る時に、やっぱり前にロスでリトル・フィートを見た時の感じとかイメージが残っていて、それをまとめたいと思ったのが『BAND
WAGON』に繋がるのかなって感じなんだよね。 |
| 長門: |
こないだ細野さんが言っていたのは、最初にヴァン・ダイクとやった時に、今までヘッド・アレンジでやっていたのとは違う制作方法。レイヤーというか、音を重ねていって作るみたいな事を初めて経験したって。『HAPPY
END』の時のヴァン・ダイクの印象はどうだった? |
| 鈴木: |
いや〜もう最初っから変わり者だっていうふうに紹介されたもんだからねぇ(笑)。でも実際そうだった(笑)。ピアノを演奏していて急に立ち上がって、”第二次世界大戦はおまえたちが悪いんだっ!”とか(笑)、”お前達の国の首相は誰だ?”とか(笑)。それから、その時に感じたのはスタジオの音だよね。はっぴいえんどはサンセット・スタジオで、リトル・フィートはクローバー・スタジオで録音していたんだけれど、音が違うんだよね。どっちも良い音だったけど、クローバーの方が、よりロック的なパンチの有る音だったの。当時は、大きなスタジオには必ずお抱えのエンジニアが居て、彼らが録音機材をチューンナップしたり改造していくんですよね。だからスタジオも個々に音が違っていて、次にやるんだったらクローバーの方が良いなって思ってた。 |
| 長門: |
そういう経験があったから、『BAND WAGON』を一人でアメリカに作りに行けたんだね。昔から茂くんは、音へのこだわりって人一倍すごかったよね。最近もエフェクターを自分でつくっちゃったんでしょ。
※詳細はコチラ |
| 鈴木: |
そうそう、自分の中では音楽とエレクトロニクスと言うのが、両方一緒に成り立っているんだ。ギターや楽器は有る程度揃えられてたので、録音機材を集め出したんですよ。録音機材を集める様になってきてから、知らなかった音が分かるようになってね。録音機材には、楽器用のアンプとは違った歴史があって、1930年代にウェスタン・エレクトリックっていう会社が制作した機材が、当時の映画館のモニターシステムに使われていたんだ。36年には、ものすごく大きな、ミラフォニックサウンドシステムのMシリーズを作った、それが今でも世界で最高って言われているセットだと思う。とにかく音は、クローバーでもサンセットでもかなわない、すごい良い音だったようだ。それにはいくつかの理由があって、そのひとつが、昔の鉄は不純物を多く含んでいたの。それが多いと倍音を生むんだよね。だから魅力的な良い音になる訳。だから、現在作られている機材や楽器っていうのは、ヴィンテージの好きな僕から見ると、音質はどんどん悪くなっているように感じるんだよね。機能や性能は、あがっているんだけどね。僕は、基本的には自分の中にイメージしている音があって、それがたまたま、古い機材の方が作るのにふさわしいって事に気がついたんだ。エンジニアとしてはボブ・クリアマウンテンが作っている音が素晴らしいなと思っている。どういうオーディオ・セットで聴いても、大体同じように聞こえるからね。今はどんどんワイドレンジで、高域も低域も広げているじゃないですか。でも彼はいわゆるAMラジオに合わせたような、音作りをしているんだと思うね。 |
| 長門: |
そうか。これから茂くんとしては、何をしていきたいのかな? |
| 鈴木: |
やっぱり、自分でミキシングをして、良い音を作っていきたいんですよ。最近、新人をプロデュースしたんですけど、ミキシング上のいろんな発見があって、そういうのを活かしてから、自分の昔のレコード『BAND
WAGON』と『LAGOON』のリミックスをやりたいなぁと思っているんですけどね。それを来年、できたらやろうかって、今、ちょっと計画しているですよ。 |
| 長門: |
プロデュースした新人って?他にもいろいろやっているとは思うけど。 |
| 鈴木: |
立道聡子さんっていう全盲のピアノ弾き語りシンガー・ソング・ライターで、ご主人も全盲で生ギターを弾いて、すごい良いんだ。シングルを2曲、プロデュースしています。それが一番最近かな。ちょっと前は(井上)陽水の1曲だけをやったり、今CMで流れているユーミンの撮影は7月に三浦で。当日は雨でね(笑)大変でした(笑)。 |
|
|
|
|