mints magazeine 伊藤銀次のBEAT GOES ON  

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#018 2007_3月号
 僕が初めて、ミッチェル・フルームのプロデュース作品と出会ったのは、1986年、クラウデッド・ハウスのシングル「Don't Dream It's Over」だった。あの頃、渋谷のタワー・レコードは宇田川町にあって、まだアナログのシングル盤を売っていて、知らないアーティストをよくまとめ買いしたものだった。その中で、プリファブ・スプラウトの「When Love Breaks Down」と共に、この曲は当たりの一枚だったが、まさかその後、彼が90年代全般にわたって、米国ルーツ・ポップ・ロック・シーンをリードしていくプロデューサーになるとは思いもしなかった。やはり、ロス・ロボスによる映画『ラ・バンバ』の主題歌「ラ・バンバ」をプロデュースしたことが、その後の彼の運命を変えたのかも知れない。なぜなら彼は決して、本来売れ線狙いのヒット・プロデューサーというより、むしろ伝統的なアメリカン・ミュージックを下敷きに、アーティスティックな音作りをする、玄人好みなプロデューサーだということが、次第にわかってくるからだ。どの時期の彼の作品が好きかは人それぞれ異なると思うが、どちらにせよT・ボーン・バーネットからジョン・ブライオン(エイミー・マンやフィオナ・アップルのプロデューサー)に流れていく、現代の白人ポップ・シーンの王道を切り開いた重要な人物だということはまちがいない。ただ残念なのは、質が高くなるにつれ、ヒット作が出なくなったことか。
 (1)は、クラウデッド・ハウスのセカンド。「Don't Drream It's Over」の入ったファーストも彼のプロデュース作だが、まだお行儀がいい。よりセカンドの方がダークなビートルズ風味で、今思えば、ミッチェル・フルームの色合いが、このアルバムから現れ出したのかも知れない。ポップ度とマニアック度のバランスが絶妙で、アレンジは今聴いても素晴らしい。(2)は、スザンヌ・ヴェガの96年のアルバム。ミッチェルが初めて彼女をプロデュースした92年の『微熱(99.9F)』はとても衝撃的な作品だったが(その出会いは化学反応のようにスパークし、二人は結婚してしまった)、僕はこちらの方が彼女らしくて好きだ。特に「Caramel」は二人のコラボが一番うまくいった作品だと思う。(3)は、ロン・セクスミスのファースト。初めて、1曲目を聴いた時、泣けたっけ。アナログ感溢れる、甘く太く暖かい音色がいい。
 次回は、ミッチェルの過激な作品群を紹介したいと思うので、お楽しみに!
(1)CROWDED HOUSE
/TEMPLE OF LOW MEN
CAPITOL CDP7 48763 2
【輸入盤】
(2)SUZANNE VEGA
/NINE OBJECTS OF DESIRE
A&M 5405832
【輸入盤】
(3)RON SEXSMITH
/RON SEXSMITH
INTERSCOPE
【輸入盤】

【伊藤銀次プロフィール】
1950年大阪府生まれ。1972年、バンド「ごまのはえ」でデビュー。
その後「ココナツ・バンク」に改名し、大瀧詠一氏プロデュースのもと活動するが「はっっぴいえんど」解散コンサートの翌日に解散。
解散後は、「シュガーベイブ」「ナイアガラトライアングルVol.1」への参加を経て、ソロ活動を開始。
1980年、佐野元春との出会いがきっかけとなりプロデューサー・アレンジャーとしての活動も始め、ウルフルズなど数多くのヒット・ソングを手掛ける。2003年、「ココナツ・バンク」を再結成しミニアルバム「ココナツ・バンク」発表。
2005年、朋友である杉真理と共にバンドを結成しライブを行うなど、表舞台でも精力的に活動中。

伊藤銀次ファンサイト[BABY BLUE]
http://sound.jp/itoginji/




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