ついにシュガー・ベイブの『ソングス』の30th
Anniversary盤が発売された。今回は、記念盤ということもあってか、大瀧師匠からコメントを求められ、ライナー用にちょこっと文章を書いたが、そこでふれているように、確かにあの頃、僕はジミー・ウェッブが大好きだった。特に詩がね。うん、かなり影響を受けたよ。たとえば「恋はフェニックス」の主人公が愛人をおいて独り旅に出て行く情景は、ナイアガラ・トライアングルVOL.1の「遅すぎた別れ」だし、シュガー・ベイブの「過ぎ去りし日々」は、ブルックリン・ブリッジの「Worst
That Could Happen」やジミー・ウェッブ の「I Keep It
Hid」あたりの影響が色濃く出ているかも。バカラックやトニー・ハッチはほとんど曲だけで詩を書かないが、ジミーは彼等同様、作編曲をこなし、音楽的にも素晴らしいのは言うまでもないが、音符人間にしては珍しく詩を書き、しかもこれがなかなかリリカルでナイーヴな作品が多くて、その異才ぶりに驚かされるのだ。前者二人が典型的な職人作家ならば、ジミーはその後70年代に大挙して現れるシンガー・ソングライターのはしりだったのかもしれない。今月はそのジミー関連から3枚。 まずは数多い彼のソロ・アルバムの中から1996年発表の『Ten
Easy
Pieces』(1)。「恋はフェニックス」、「ウィチタ・ラインマン」、「マッカーサー・パーク」など、彼が60年代に他人に書いてヒットさせた曲を、彼自身のピアノによる弾き語りで聴かせるセルフ・カヴァー・アルバムだ。オリジナルと比べると、華やかさはないものの、その飾り気のない唱法がしみることしみること!何度聴いても飽きのこない名盤だ。(2)は、名曲「マッカーサー・パーク」のオリジナルが聴けるリチャード・ハリスのファースト。ドナ・サマーのヒットでおなじみだが、どっこいこちらがオリジナル。シェイクスピア俳優のリチャードの渋い枯れた歌と、ジミーの才気溢れるアレンジが感動的だ。時代を反映したシュールな詩が、さらに曲を個性的にしていて、ジミーの作品の中でも傑作中の傑作!(3)は、ジミーの「The
Moon Is A Harsh
Mistress」の、インストによるカヴァーが聴ける名盤。インストとは思えない歌心は、まさにパット・メセニーの真骨頂。ジミーと同じく米中西部出身アーティストの音楽的良心を感じさせる僕の愛聴盤だ。もっとジミーを知りたい人は、グレン・キャンベル、フィフス・ディメンションなどのベスト物を、ぜひ辞書を片手に楽しんでみてほしい。